放電プラズマによる自己免疫疾患の治療に関する基礎研究
Gr.リーダー:近清 唯人(M1),メンバー:田中 千智(B4)
研究概要 近年,放電プラズマを医療に応用する「プラズマ医療」が活発に研究されています。本研究グループでは,放電プラズマを自己免疫疾患の治療に活用することを目標とし,その基礎研究を進めています。自己免疫疾患とは,体内において異物から身を守るための免疫細胞が,何らかの異常により自分自身を攻撃してしまう病気です。このような疾患の治療に対して放電プラズマを応用するためには,放電プラズマやこれにより生じる化学活性種が免疫細胞にどのような影響を及ぼすかを詳細に調査する必要があります。現在,私たちは,放電プラズマの特性を調査しながら,プラズマを照射した生理食塩水が免疫モデル細胞(Jurkat細胞)に及ぼす影響を調査しています。
担当学生さんからのメッセージ この研究テーマでは,放電プラズマの生成だけでなく,細胞の培養から解析までを全て自分たちで行っており,電気工学だけでなく医学や生物学などの知識を身に付けることができます。また,医学部や生物産業資源学部の先生方と定期的にミーティングを行い,多方面から助言を頂きながら日々精力的に研究を進めています。研究テーマや研究室についてもっと知りたい人は,いつでも研究室に来てください!
誘電体バリア放電中におけるオゾン数密度計測に関する研究
研究概要 本研究グループでは,放電プラズマ中でオゾンを直接計測する技術の開発を行っています。オゾンは強い酸化力を持ち,反応後の副生成物が酸素であり残留毒性がないことから、殺菌や脱臭,脱色などに利用されています。特に,産業分野で利用されるオゾンの生成には,誘電体バリア放電プラズマが広く利用されていますが,放電プラズマ発生には熱を伴うため,オゾンの生成効率が低いという問題があります。オゾン生成効率を向上させるためには,放電プラズマ中でのオゾン生成(分解)過程を詳細に知ることは重要と考えています。本研究室では,オゾンが可視光(オレンジ色)の光を吸収する性質を利用して,放電プラズマ中で直接オゾンを計測する技術を開発しております。
担当学生さんからのメッセージ この研究では,放電プラズマだけでなく,オゾンやオゾンと各種物質との化学反応を取り扱うことから,電気電子工学だけでなく化学の知識も学ぶことができます。また、オゾンがオレンジ色の光を吸収するという性質を利用して,放電プラズマ中にLEDを照射してオゾンを検出するという技術を研究しているのは本研究室だけです。本研究室独自の技術を使って自分で何ができるか考え研究してみたいと思う学生さんには楽しい研究になるのではないでしょうか!
放電プラズマによる水中難分解性物質の分解に関する研究
Gr. リーダー:清 岳雲(B4),メンバー:Xin Chen(研究生),船場 光顕(B4)
研究概要 現在,水質汚濁が世界的な環境問題となっており,その原因であるダイオキシンなどの難分解性物質はオゾンや塩素などの一般的な水処理方法では分解できません。難分解性物質の分解にはOHラジカルが有効であり,その生成方法には過酸化水素とオゾンを組み合わせた方法がありますが,コストが高く効率も良くありません。そこで近年では,水と放電プラズマを接触させることで生成したOHラジカルを水処理に活用する技術が研究され,水処理の高効率化が期待されています。本研究室では,処理水を電極表面に噴射して形成した水膜表面上に誘電体バリア放電プラズマを生成して難分解性物質を分解する水処理技術を開発しています。現在は,難分解性物質として比較的安全な酢酸を処理対象とし,最適な水処理条件の模索を行い,難分解性物質分解の高効率化・高速化を目指しています。
担当学生さんからのメッセージ この研究テーマでは,放電プラズマを基に様々な化学反応が起こります。そのため研究を進めていく中で,電気電子工学だけでなく化学の知識も身に付けることができます。また,先生からアドバイスをいただきながら研究や考察を行い,次はどんな実験を行うか考えながら日々取り組んでいます。「実験が好き」や「放電に興味がある」,「電気以外の知識も身に付けたい」といた学生さんは楽しく研究を進めることができると思います!また,少しでも興味をもった学生さんは,いつでも研究室に来てください!
プラズマ照射ミストによる新しい殺菌技術の開発
Grリーダー:宮内 優太朗(M1),メンバー:前坂 幸明(B4),肌附 海(B4)
研究概要 近年,新型コロナウィルスの蔓延により,殺菌や除菌の需要が高まっています。今や飲食店やスーパーなどの入口には必ずと言っていいほどエタノールの入ったボトルが設置され,手指の消毒を行うようになっています。エタノールは飲食店やスーパーだけでなく,医療の現場でも必要であり,このままエタノールが消費され続けると,エタノールが不足し,価格の高騰や必要なところに供給されなくなるといったことが懸念されます。そこで人体に利用可能な新しい殺菌剤が要望されています。
プラズマを水に照射すると,活性酸素種(Reactive oxygen species: ROS)や活性窒素種(Reactive nitrogen species: RNS)と呼ばれる反応性の高い化学物質が生成されます。このようなプラズマを照射した溶液をプラズマ活性溶液といい,これを細菌に投与することで,細菌が不活化されることが知られています。本研究室では,溶液にプラズマを照射すると同時にミスト化する技術(プラズマ照射ミスト)を考案しました。この構造では,プラズマ照射されると同時にミスト化された溶液は,短時間で処理対象に到達することから,従来のプラズマ照射溶液では利用が困難であった短寿命の化学活性種を処理対象に作用させることができる可能性があります。本研究室では,このプラズマ照射ミストを大腸菌に直接噴霧したところ,大腸菌を不活化させることに成功しました。そこで現在はプラズマ照射ミストによる大腸菌の殺菌特性を詳細に調べながら,殺菌機構の解明を目指した研究を行っています。最終的には人体にも利用可能な殺菌技術の確立を目指します。
担当教員からのメッセージ この装置を考案した当初,殺菌効果がなかなか得られませんでした。しかし,この研究を担当してくれた当時4年生の女子学生さんが,様々な条件で殺菌実験を行い,殺菌効果が得られる条件を見い出してくれました。何度も何度も失敗して大変だったと思いますが,卒業する最後の最後で殺菌効果を実証し,努力が報われた瞬間に私はすごく感動しました。先輩が最後に残してくれた貴重な研究成果を引継いで,この研究を発展させてくれる学生さんを募集しています!